2025年2月2日(日)第58回宮崎市PTA研究大会を開催しました。
大会テーマ
「防災減災を考える」~子ども達の輝く未来のために~
パネルディスカッションテーマ
「災害前にPTAができること~備えと連携~」
として防災についてのパネルディスカッションを行いました。
- ファシリテーター
- 黒木淳子氏(防災コンサルタントMamoruwa代表)
- パネリスト
- 山下裕亮氏(京都大学防災研究所助教)
- 日髙和広氏(宮崎市小学校校長会会長)
- 二見志信(宮崎市PTA協議会会長)
当日はオープンチャットを使用し、参加者から様々なご質問やご意見を頂きました。
ファシリテーターとパネリストからの回答が揃いましたので紹介いたします。
尚、質問一覧・回答については、担当ではないものも含まれる可能性がありますが、ご了承ください。また、あくまでそれぞれの見解や回答であり、場所や状況等により異なる場合があることも併せてご了承ください。
※今回はPTA研究大会のご質問だったので、今後のPTA活動に活かせるようご回答いただきました。会場にて回答した質問については、除いています。
- 地震が長い時間続く場合、身動きできないと思うのですが、すぐに外に逃げた方がいいですか?熊本地震では、地震中に倒壊して生き埋めになった方もいたようなので。(保育士)
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黒木淳子氏
能登地震では、「揺れと同時に家が崩れてきたので、外に逃げた」という話を伺いました。 1 つの判断として、その時外に出た方が安全な状況であれば出てください。ただし、地震はこの方法が良い!という正解はありません。たくさん想定されることを考えて、「この時はこうしよう、ここがこうなったらここから出よう!!」などたくさんの選択肢を考えてみてください。山下裕亮氏
一般に、揺れている最中に無理に外に出ることは避けることが無難です。屋外に出
ると、住宅であれば瓦,ビルであれば窓ガラスや外壁などの落下物が襲ってくる可能性があるためです。しかしながら、耐震性の低い建物や、明らかに危険な場所であれば、安全な場所に移動すべきときもあります。安全な場所が外しかなければ外に出ることも選択肢になると思いますが、これらを瞬時に判断するためには事前に危険性を理解しておくしかありません。
- よく避難の際は車を使用せずにと聞きますが、津波到着予定時間から逆算した場合、子どももいる家庭は車での避難が考えますが、先生のご意見を伺いたいです。(まんまる)
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黒木淳子氏
東日本大震災では、車で避難した人が多く渋滞が起こり、津波の被害に遭ったケー
スもたくさんありました。最後は自分の足で逃げないといけません。普段から、子どもたちとどれぐらいで逃げられるのか?どのルートが逃げられるのか? 話し合ってみてください。PTA の中でも話し合われると良いのではないでしょうか?山下裕亮氏
原則として、車での避難は避けた方が無難です。地域によっては車での避難を考えている地域もありますので、絶対にダメだとは言い切れません(車でないと避難ができないという方も一定数いることは事実です)。とはいえ、車での避難となると必ず渋滞の問題がつきまといますので、私個人の考えとして車避難は一か八かの選択だと思っています。もし車を使わずに避難ができるようであれば、間違いなくそちらをお勧めします。
- 最初の報道で、なんというキーワードがでたら非常事態の可能性が高いと思ったらいいでしょうか。震源地だと、どうなりますか?(konoha)
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山下裕亮氏
まず、最初の報道は過小評価されている可能性がありますので、最初の報道だけで判断するのは極めて危険です。継続して情報を入手することが重要です。また、震源地だけで評価は不可能です。
現在の気象庁の情報発表の仕方として、具体的に数値を出さない情報(「マグニチュード 8 を超える巨大地震」や「大津波警報(巨大)」)が出たときには非常事態と捉えていただく必要があります。
- 日向灘地震と、南海トラフ地震が連続でくる可能性の有無(北風たろう)
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山下裕亮氏
当然あります。ただし実際にそのようなことが起こったということは現在の科学的知見からは明らかにできていません。
- 現在危惧されている日向灘地震、南海トラフ地震は震源が海側、つまり東側にあると思います。単純に考えると、揺れは東西方向をメインになるのではないかと思います。固定具は当然のことですが、家具などを設置する際に、東西を長軸方向に設置すると転倒するリスクが少ないような気がするのですが、意味はないでしょうか?(つねっきー)
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山下裕亮氏
断層運動は非常に複雑なため、揺れの方向が東西方向にメインになるとは限りません。家具などを設置する場合、一般に建物自体は長軸方向に対して大きく揺れやすい傾向にあるので、建物の長軸方向に対して直交するように設置する方が転倒のリスクは減ります。
- 1月の地震のとき、すぐに津波の心配はありませんと情報がでたのですが、その後また津波警報がでました。避難した後自宅に戻って、また避難しました。こういった情報対応はどうすればいいでしょうか?(ヒナン)
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山下裕亮氏
1 月の地震は少々複雑な地震だったため、気象庁の速報値が過小評価されてしまい津
波注意報の発表が遅れてしまいました(発表されたのは警報ではなく注意報です)。このようなことは今後も起こりうることなのですが、少なくとも最初の発表から次の情報更新まで 15 分くらいはかかりますので、情報の更新があるまでは避難を継続することが望ましいと思います。ただし、津波注意報であれば本当に避難が必要な場所にお住まいでない限りは戻ってもらって大丈夫です(避難し続けることのリスクもあるため)。ご自宅等が津波注意報で避難をしなければならないくらい低地だったり川のそばであれば、避難を継続することをお勧めします。(避難を継続する際に、必ずしも屋外ではなく、安全な知り合いのお宅など、注意報レベルで安全な避難先も事前に考えてお
くとよいでしょう)
- 津波の心配もあるのですが、宮崎市には旧耐震基準の建物がどれくらいあるのでしょうか?耐震補強未実施の建物も数多くあり、子ども達が通学中に震度6、7で倒壊する恐れの建物もあり、心配です。(とうごりら)
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黒木淳子氏
一般家庭の数字は公表されていませんが、たくさんあります。 子どもたちと、通学路の街歩きをして、危険な場所マップ等作ってはみてはいかがでしょうか?(逆にここが危ないから、逃げ場所マップでもよい)山下裕亮氏
数値は不明です。地区ごとにも違うでしょうし、旧耐震基準でなくとも倒壊する可能性がある建物はあります。通学中に巻き込まれることが心配であれば、通学路中の危険箇所をチェックして、場合によっては通学路を変えるなど、受け身ではなくこちらから行動を変えることも選択肢かと思います。
- 日向灘地震は、M7 程度が周期的におきていることで M8以上の巨大地震にはなりにくいという話を聞いたことがあります。本当でしょうか?(つっつん)
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山下裕亮氏
以前はそのような考え方もありましたが、今はこの考えは間違っていることが 2011 年の東北の地震で明らかになりました。従って、日向灘で M7 クラスの地震が定期的に起こることが M8 の地震が起こりにくいという理由にはなりません。
- マグニチュードと震度、震度と縦揺れ・横揺れの関係について教えて下さい。(えび蔵)
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山下裕亮氏
マグニチュードが大きくなると、震度もある程度までは比例して大きくなりますが、ある程度で頭打ちになります。震度階級が 7 までしかないのはそのためです。震度と縦揺れ・横揺れは関係ありません(縦揺れと横揺れの総和で計算をしています)。皆さんが感じている大きな揺れ(S 波)のほとんどは横揺れです。
- 同じ震度のエリアでも、地盤の性質や強度によって実際の揺れの大きさが変わることはありますか?あるとすると、自分が住んでいる場所の地盤の性質や強度を知る方法はありますか?(つっつん)
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黒木淳子氏
https://www.j-shis.bosai.go.jp/map/
表層地盤をクリックしたら調べられます。山下裕亮氏
あり得ます。震度は距離である程度決まりますが、最終的には表層の浅い地層の強さの影響を大きく受けます。震度はあくまで代表点での計測値ですが、家 1 軒隣でも揺れ方が違う可能性は十分にあります。例えば以前は谷や池、沼だった場所を埋め立てて造成した土地と、元々地山を造成した土地では、地盤の強度が全く違います。同じ宮崎市内でも 1 つの地震で震度は様々です。
- 南海トラフ地震は、もうある物として備えているつもりです。地震の際は、避難所ではなく賃貸マンション5階で過ごせるようにしたいです。南海トラフ地震では周りの地域も被災することを考え食事、トイレなどどの程度の期間分、準備すればよろしいのでしょうか。(小学生ふたりの母)
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黒木淳子氏
災害時は、災害発生から 72 時間(約 3 日)は命の救助を優先します。なので、物流もストップします。その後ライフラインの復旧など行っていくために、最低 3 日間の備蓄が必要ですが、大規模な災害になるともっと時間がかかります。 出来れば 1 週間~10 日分の食料は備えていた方が良いです。 参考に、能登の地震では数週間物流が止まり、ライフラインの復旧も数か月かかっています。山下裕亮氏
避難所ではなく自宅マンションで地震後の生活を継続したいとの気持ちはよくわかります。もし本気でそのように過ごすのであれば、大地震発生時にマンションでどのような事が問題になるのかをよく理解しておく必要があります。よく言われるのは、配管の損傷により下水が使えない問題です。上水道が使えたとしても、下水管が損傷しているとトイレや風呂は NG です。配管の損傷がないかチェックを受けてから使うことが必要になりますが、南海トラフ地震のような大規模災害になった場合にチェックをすべき建物が多すぎて時間がかかることがあります。また、5 階だと、直結式給水方式であったとしても、停電すると上水道も水圧が足りず給水できなくなる可能性が高いです。他にも生活していく上で様々な問題がありますので、事前に何が起こりうるのか考えた上で備蓄の日数を考えるべきかと思います。
- 建物の漏電や火災を考えると、建物内で非難するのも心配なのですが、大地震が起こったときには、何もない広い場所、園庭などで待機する方がいいのでしょうか?(保育士)
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山下裕亮氏
どこに避難するか、これが正解というのはありません。確かに火災のことを考えれば屋外が安心かも知れませんが、例えば真夏や真冬などの環境が厳しい時期であれば、屋外に長時間避難するのは別のリスクがあります。いろんなリスクを考慮した上で、その時の状況に応じて適切な対応ができるように、避難場所や避難方法を複数考えておくことが重要です。
- 小学校が避難場所になっており、体育館の鍵を県の職員さんがもっているけど、実際、災害の時は誰が避難所を仕切るのでしょうか?今、自治会とか入っていない人がいるから、地区の人とももめたりするのでは。けっこう近くに人知らない人いるので。(109)
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黒木淳子氏
避難所はある程度、担当を決めて運営していきますが、やはり自治会長さんとかが仕切ってくださる事が多いです。基本的には、避難所は避難者全員で運営するのが基本です。ですが実際は出来ない方もいらっしゃるので、出来る方で分担しながら運用します。避難所には、地域の方以外にも観光者や出張で宮崎に来ている人も避難してきます。 自治会加入者だけでなく様々な人が避難してきますので、お互いにコミュニケーションをとりながら運営していきたいですね。
- この寒い時期に学校が避難場所になる場合、冷える体育館で過ごすには、何を持っているのがいいでしょうか。(ぺんぺん草)
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黒木淳子氏
それを想像して、何がいりそうか?PTA などで話し合ってみて下さい。
- うちの小学校は地域の中では最後の避難所になっているからかマンホールトイレがまだ設置されていません。こういった必要性のあるものを要望するときはどこに話したらいいのでしょうか?
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黒木淳子氏
マンホールトイレは設置できる所と出来ない所があります。地域協議会などの地域の団体とも協議をしながら、進められてはいかがでしょうか?
- PTA の事業として、災害をテーマにしたものができないかを考えています。どのような内容(講和、体験型学習など)にすると子どもや親の意識が高くなるのか、具体的な実例があればそれも交えて教えていただければと思います。(おっち)
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黒木淳子氏
まずは、地域の状況や弱み強みを分析して、その地域に合った訓練が必要です。難しい事はせず、出来ることからされてはいかがでしょうか?
(例)地域と PTA と防災まちあるき 児童・生徒への防災講座日髙和広氏
PTA の活動としては、家庭教育学級で講和や体験型学習を行うことが考えられると思います。また、学校保健委員会の内容を防災の観点から工夫してみてもよいかと思います。
- もしものときのために自治会や親子会でできることってなんでしょうか?校長先生と二見会長に伺ってみたいです。(北風たろう)
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日髙和広氏
本郷地区では、青少協の取組で毎年歩こう会を実施しています。今年度は国富小校区を歩く中で消防学校の見学を入れ、火事への備えや消防施設等の説明をしていただきました。このようなイメージで、防災意識を高める歩こう会などを企画したらどうかと個人的には考えます。二見志信
まずは地域に知り合いを増やすことでは無いでしょうか。そのために自治会や親子会に所属し様々な行事に参加すると、自ずと知り合いが増え、もしもの際に助け合える関係性になれると思います。自治会やまちづくり推進委員会などで防災訓練もされていると思うので是非参加してみてください。コミュニティがしっかりしているところは復興が早いと聞きました。
- 東日本大震災で学校ごとに日頃の意識や訓練が被害の明暗を分けたとありました。宮崎市内の小中学校では、避難訓練に関するマニュアルや重要度は統一されていますか?それとも各学校に委ねられていますか?(さと)
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生涯学習課
宮崎市内の小中学校におけるマニュアルは、地理的な状況や想定される災害の種類等が学校ごとに異なるため、統一的なマニュアルは設けておらず、各学校に委ねられています。
- 学校からの指導を受け、家庭で次のような指導はしていますが、万全策かどうか不安を感じています。仮に子ども達の登下校時に大地震や津波が起きた場合です。我が子には通学路にある高い企業ビルやホテルにはまずは、一時避難をするように指導しています。ですが、例えばお助けハウスのように、学校と企業・ホテルなどが、災害時に限りですが、登下校中の子ども達が避難してくる可能性を説いて協力体制を結んでいただくことはできないものでしょうか。1人2人また数人の子どもが逃げてきて、企業ビルなどが受け入れてくれるのか、家庭による子への教育指導だけでは済まない気がして、不安です。(かっちゃ)
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生涯学習課
近隣住民の方が緊急・一時的に津波から避難できるよう、ビル、マンション、立体駐車場などの施設管理者の同意を得て市が協定を締結し、「津波避難ビル」として指定しています。津波避難ビルには、その旨を示す看板を設置しています。 いざという時のため、お子様と一緒に学校や自宅周辺の津波避難ビルを一度確認しておきましょう。
※「津波避難ビル」場所は、宮崎市のホームページやハザードマップで確認できます。黒木淳子氏
通学路の安全についての協力体制は、学校だけでなく PTA や登校班自治会等との協働も必要です。マンション管理者や企業と協議する場合は地域との協力も必要です。
- 学校で例えば家庭教育学級などで希望者で防災キャンプをしたいのですが、学校としては、ハードルは高いですか?
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日髙和広氏
キャンプの内容によると思います。あとは校長の判断だと思います。
- 市内の小学校、中学校で東日本大震災級の地震がきて、避難所として使える学校は何校くらいありますか?(そらまめ)
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生涯学習課
宮崎市立小中学校73校のうち70校が避難所として指定されています。そのうち、60校が、地震・津波に対応できる避難所です。
- 巨大地震が起きるときに携帯に警報音がなりますが、健康体でもびっくりしすぎて、心臓がバクバクします。余計焦ってしまします。周りでも同様の意見が多いです。警報音の見直しとかはないですか?(sotoyu)
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黒木淳子氏
緊急性を伝えるためにあまり気持ちの良い音になっていません。
- 通学路に古くて高い石壁があります。地震で崩れてくる可能性がありますので、通学路整備要望を出したのですが、個人宅のため、要望書を出してそのまま7年経っています。これはどうにもならないのでしょうか?(よっしー)
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山下裕亮氏
ブロック塀に関して、建築基準法でいろいろと決まりがありますが、明らかに違反していなければ、個人宅のブロック塀を撤去するかどうかの判断を第三者が決めることは難しいと思います。ブロック塀撤去には、条件によりますが市の補助金が下りる可能性もありますので、一度宮崎市に相談されてみるとよいかもしれません(ただし撤去するかどうかを決めて補助金を受け取るのはあくまで所有者です)。また、場合によっては通学路自体をより安全なルートに変更できるのであれば、それも 1 つの案かもしれません。
- 被害次第と、陸の孤島であることが、備える食料等の量などは異なることが、準備する量の想定を難しくしています。(A小学校PTA会長)
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黒木淳子氏
災害時は、災害発生から72時間(約3日)は命の救助を優先します。なので、物流もストップします。その後ライフラインの復旧など行っていくために、最低3日間の備蓄が必要ですが、大規模な災害になるともっと時間がかかります。出来れば1週間~10日分の食料は備えていた方が良いです。参考に、能登の地震では数週間物流が止まり、ライフラインの復旧も数か月かかっています。
- 避難所として使うのが校舎なのか、体育館なのか、最近は様々な個別対応のために校舎も避難所として使うことも増えてきています。しかしながら子どもの教育をどう続けるか、という問題に直面し、なるべく早く避難所を閉じて、学校を再開させたいという考えもあります。(A小学校PTA会長)
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黒木淳子氏
災害の規模にもよりますが、仮設住宅や災害支援住宅の建設が早く進めば、再開も早いです。宮崎市内の学校には、避難所運営のマニュアルがあります。どの教室をどう使うのか?図面などで記しています。1度、PTAや地域と一緒に検証をしてみてはいかがでしょうか?
- 市が避難所として設定している学校は、災害後、建物の状況を確認して避難所とするかしないかが判断されると思います。(A小学校PTA会長)
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黒木淳子氏
その通りです。
- 私が勤めている園が高台にありますが、建物が老朽化しています。(保育士)
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黒木淳子氏
園と相談してください。
- 今回の2回の地震で地盤が弱くなっています。今年の梅雨時期と台風などの大雨のときに山沿いや日南海岸沿いは十分に気をつける事に言及ください。(中山)
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黒木淳子氏
沿岸部だけでなく、山間部も気をつけてください。